2023年
5月24日
水曜

〜28日
日曜
10時〜17時(最終日16時まで)
場所
ステュディオ メゾンダール
大阪府大阪市西区靱本町1-16-19 2F
06-6449-7773
三田村きあん展
四ツ橋線 本町駅28番出口より徒歩4分
御堂筋線 本町駅 2番出口より徒歩8分

 文豪達には儚さがある。文豪達には強さがある。
 文豪達はあの五月雨の心地よい切なさを私に運んでくれる。
 かつての大阪を偲ぶには、古い文庫本と三田村きあんの文字がいい。

 印章作家三田村きあんの文字は、女性的な美しさを有し、
 繊細さと、丸く仕切られた空間を宇宙に変える物語性がある。
 きあんの意識が線に変わる瞬間、その意識は鮮明に物語を写し出し、
 そこに世界は生まれる。それは一冊の文庫本のようだ。

「はんこと大阪の文学」 〜職人技から表現者へ〜

 三田村きあんの挑戦が心地よい。
 それはきっと、人の未来を優しく包む、きあんの描く物語。

文:Brand Designer  小山 啓一

STORY

私は、印章作家として個人様、企業様にはんこを創ってきました。はんこは押印によって「認証」を紙面に示す為に存在するものです。
結びつきや決意、認められた歓びを証するそれは、アイデンティティの結実であり「人」や「会社」そのものだと私は考えます。
私の作品には、唐草やアールヌーボーなど自然の持つ愛らしさ、日本古来の美である崩しと間へのリスペクトがあります。
それは、私の美しさへのこだわり「どうぞ、よろしゅうに」という心根の心地よさを具現化するためにとても重要なエッセンスです。

印鑑はプライベートなものであり、公に晒されることは「否」とされ、引き出しの奥を棲家とします。故に私は印章作家として作品を公に披露することなど、一生ない。それが印章作家としての生き方だと思ってきました。そこに新たな思いを投じたのは「デジタル化」の波でした。

「印鑑は無用。この世からはんこは無くなる」

作家として、美の探求者として生きた私の人生は、時代という残酷な刃に切り捨てられてしまうのか? 時代の波に翻弄させられた、小さなものづくりに命をかけてきた日本の名工達の諦念が、雪のように私の心に積もっていきました。

「私たちは職人である前に美の探求者であり、アーチストである」彼ら名工達の叫びが神々しく舞い降りたのは昨年のこと。

皆さんに私、三田村煕菴の美意識を感じて頂きたい。私の作家としての意識は、常に誰かの門出を祝福してきたのです。今、作品を前にするあなたを心から祝福し、楽しませることができるなら、私の作家としての道は光に満ちているはずです。

デジタル化は私に大きなきっかけを与え、頑固に握りしめていた固定概念を解放しました。その強引で軽快なやり方は、かつての師匠のようにとても厳しく、そして深い愛情に満ちていたのです。

「さ、やってみぃ」

今回の個展「はんこと大阪の文学」は、世界で初めての実用印章の美の個展となります。大阪の文学を集め、その中に丸い印章をアクリル絵の具を用いて描いたものです。
お時間が許せば、私の門出となる個展「はんこと大阪の文学」に足を運んで頂き、方寸の美といわれる世界を楽しんでいただけたらと思います。


三田村煕菴
1959年 大阪生まれ
賞歴
平成29年 秋 黄綬褒章受章
/卓越した技能者表彰「現代の名工」
/大阪府優秀技能者表彰「なにわの名工」